
子育てが始まってから、ぱったりと山に行けなくなった——。
「行きたいのに行けない」というモヤモヤや、休日に山の写真を眺めては感じる小さな焦り。同じ思いを抱える登山好きの親は、きっと少なくないはずです。
先に結論を言うと、私は今、「行けない」のではなく「行かない」を自分で選び、その状況にむしろ満足しています。
私は理学療法士(PT)として働きながら、これまで140座以上を登ってきました。毎週のように山へ通っていた時期もあります。だからこそ、山へ行けなくなった喪失感もよく分かります。
けれど今は、登山よりもはっきり優先したいものがあります。
この記事は、ノウハウではなく、子育て中で登山ブランクを抱える私の頭の中の整理です。同じように山から足が遠のいた方が、焦りや罪悪感を少しだけ手放して前を向く、そんなきっかけになればうれしいです。
「行けない」のではなく「行かない」を選んでいる理由
正直に言えば、時間をやりくりすれば登山に行く方法はゼロではありません。それでも私は、今は行かないことを選んでいます。理由は4つあります。
子供と過ごす「今」は、二度と戻らないから
いちばん大きいのはこれです。
手を繋いで散歩すれば、たくさんの発見を一生懸命に話してくれる。遊ぼうとしつこくせがんでくる。抱っこすれば、ぎゅっと抱きしめ返してくれる。
こんな時間が、あと何年残されているだろう——そう考えると、答えは自然と出ました。
登山に費やす時間よりも、今は子供に費やす時間を優先したい。そのほうが、将来の自分に後悔が残らない。
山はきっと、これからも逃げません。でも、子供のこの時期は今しかないのです。
家族のために、無事でいたいから
自然を相手にする以上、登山にはどうしてもリスクがつきまといます。
独り身のころは、そのリスクも含めて自分の責任だと割り切れました。けれど今は違います。万が一のとき、遺される家族のことを想うと、無理はできません。
滑落や転倒といった大きな事故だけではありません。骨折や捻挫で数か月、仕事や育児に参加できなくなるだけでも、家族への影響は決して小さくありません。
経済的にも苦労をかけ、精神的にも強い負担をかけてしまう。なにより、子供のこれからを見守れなくなるかもしれない。それは、私自身にとっても何より辛いことです。
もちろん、子連れで登山を楽しむ選択肢もあります。ただその場合も、子供を危険に晒さないよう十分に配慮が必要です。だから焦らず、子供の成長を見ながら、スモールステップ・スロースタートで楽しんでいきたいと思っています。
趣味より、家計を優先したい時期だから
現実的な話として、登山は道具や交通費など、それなりにお金がかかります。
子育てにお金がかかるようになり、趣味に費やせる予算は当然減りました。今はさらに、夫婦そろって時短勤務を選んでいるため、収入も少なめです。
だからこそ、登山は家計に余裕が出るまで、いったんお預け。これも前向きな先送りだと考えています。
妻に負担をかけたくないから
登山は、1度の外出に要する時間がどうしても長くなります。
その間、妻が1人で子供を世話することになる。それは、想像以上に大きな負担です。
子供が小さいうちは、夫婦2人で協力することがいちばん大切。自分だけが山で気持ちよくなっている場合ではない、というのが正直な気持ちです。
お互いが息抜きできる時間を作りながら、今は家族全体のバランスを優先したいと思っています。
それでも消えない「山に行きたい」気持ちの、昇華のしかた
とはいえ、山に行きたい気持ちそのものが消えるわけではありません。その思いを、私はこんなふうに昇華しています。
子供と一緒に、アウトドアへ出かける
山には行けなくても、自然の中に身を置くことはできます。
公園でも、河原でも、近所の里山でも。自然の中に立つだけで、気持ちはある程度満たされます。
そして何より、これは子供と将来一緒に登山を楽しむためのスモールステップでもあります。今は種まきの時期だと思えば、外遊びの一つひとつが愛おしくなります。
山の「情報」に触れて、繋がりを保つ
物理的に行けなくても、山との繋がりは保てます。
- 登山仲間や山小屋などのSNSを見て楽しむ。山との繋がりが途切れていないと実感できます。
- 登山仲間と連絡を取り合う。山談義や、それ以外の雑談も楽しい時間です。
- そして、このブログを書く。
このブログの執筆は、皆さんへの情報発信であると同時に、山から離れている私自身のためにもなっていると感じます。書くことで、山への思いがちゃんと自分の中で生き続けるのです。そもそも私が登山ブログを始めた理由も、まさにここにありました。
将来の登山復帰に備えて体づくりを続ける
登山に行けなくても、体づくりは続けています。
散歩をしたり、階段を使ったり、自宅で軽く運動したり。
いつか登山を再開するときにゼロからやり直さなくて済むように、今は基礎体力の貯筋期間だと思っています。
結論:今の私は、現状に満足している
私は登山をやめたつもりはありません。今は一時的に、優先順位が変わっているだけです。
子供が成長したら、一緒に低山を歩いてみたい。もう少し手が離れたら、夫婦で山へ出かけたい。そしていつか、自分一人でも再び山を楽しみたい。
山は逃げません。だから今は焦らず、次の山行のための準備期間だと思っています。
ここまで書いてきて、あらためて思います。今の私は、この状況にちゃんと満足しているのだと。
- 自分の状況を、冷静に客観的に見られている。
- 自分の価値観を整理した結果、登山よりも高い優先順位に家族の存在があると、はっきり認識できている。
- 登山自体に行けていなくても、SNSが発達した今、山との繋がりが断ち切れることはない。
「行けない」とうなだれるのではなく、「今は行かない」と胸を張って選ぶ。この一文字の違いが、気持ちをずいぶん楽にしてくれました。
まとめ:山は逃げない、今を大切に
最後に、考えてきたことを振り返ります。
- 私は「行けない」のではなく、家族を優先して「行かない」を選んでいる。
- 理由は、子供との今・家族への責任・家計・妻への負担の4つ。
- 山に行きたい気持ちは、外遊び・SNS・仲間との交流・ブログ執筆・体づくりで昇華できる。
- 今を準備期間と捉えれば、山から離れた時間も前向きな日々になる。
もし今、子育てで山に行けずモヤモヤしている方がいたら、どうか自分を責めないでください。それは趣味を諦めたのではなく、大切なものの順番を選んだだけ。この登山ブランク期間も、長い登山人生の一部だと思います。
山は、逃げません。いつか子供と一緒に登る日を楽しみに、今はこの足元の幸せを、めいっぱい味わっていきましょう。