夜のリビングに敷かれたヨガマットと置かれた登山靴の水彩画 登山の自宅トレーニングが続かない理由と3つの続け方を理学療法士が解説 ヤマカルテ

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「山に行けない時期こそ体を作っておこう」と決めたのに、家だと2週間ももたない——。

メニューが分からないわけではありません。スクワットも段差昇降も知っている。それでもマットを敷く前に一日が終わる。この記事は、そこで止まっている人に向けて書いています。

結論から言うと、続かない原因はあなたの意志ではなく、家という場所に強制力がないことにあります。だから変えるべきは性格ではなく、続く仕組みのほうです。

理学療法士(PT)として10年以上、患者さんに自主トレを指導してきました。続いた人と続かなかった人の差も、その理由も、現場で何度も見ています。さらに今回は、自分自身でオンラインのレッスンを試して、良かったところと物足りなかったところを確かめました。

読み終わるころには、自力型・動画型・約束型という3つの選択肢の中から、自分の生活に合う続け方をひとつ選べるようになります。

続かないのは、意志が弱いからではない

家トレが途切れる理由は、性格ではなく構造で説明できます。山と比べると、家には決定的に足りないものが3つあります。

家でのトレーニングが続かない3つの理由 きっかけがない・強制力がない・目安が分からない 意志ではなく環境の問題 ヤマカルテ

  • きっかけがない——登山には「何時に家を出る」という区切りがある。家トレにはそれがない
  • 強制力がない——やめても誰も困らないし、誰も気づかない
  • 目安が分からない——この回数でいいのか、この重さでいいのか、判断する材料がない

臨床でも同じです。退院時に自主トレのメニューを渡して、次に会うときまで続けていた人は、正直なところ多数派ではありません。そして続いていた人には、はっきりした共通点がありました。やる気があったのではなく、やる時間が決まっていたのです。

「朝の薬を飲んだあと」「デイサービスから帰った直後」のように、すでにある習慣の後ろにくっついていた。逆に「気が向いたとき」と答えた人は、ほぼ全員が止まっていました。

「誰かが見ていれば続く」は、思ったほど単純ではない

自宅での運動が続くかどうかは、指導者がつくかどうかでは決まりません。直感に反する研究結果があります。

60歳以上を対象にした34件のランダム化比較試験(合計2,830人)をまとめた2024年のメタ解析では、指導者がつく運動のほうが、自宅でひとりで行う運動より成果が大きいと報告されました[1]。膝を伸ばす筋力、椅子からの立ち座り、歩く速さ、筋肉量。いずれも指導者ありのほうが上でした。

ところが同じ研究で、出席率はどちらも約81%で、差がありませんでした。

つまり、指導者がついたから続いたわけではないのです。同じくらい通っていて、それでも結果に差がついた。

なぜ差がついたのかは、この研究では断定されていません。原典自体が、比べた2つのグループで運動の量や強度がそろっていない研究が多かったことを限界として挙げています。「見てもらえないと負荷やフォームが甘くなるから」というのは、あくまで私の現場感覚からの推測です。臨床で自主トレの様子を見ていると、回数はこなしていても浅いスクワットになっている人は珍しくありません。

対象が高齢者である点も割り引いて読む必要があります。しかも研究に参加すると決めた時点でやる気のある人たちです。日常の「三日坊主」とは前提が違います。

それでも、この結果から取り出せる考え方ははっきりしています。

  • 続けるための工夫と、質を上げるための工夫は別物である
  • 自分に足りないのがどちらなのかを先に決めないと、対策を間違える

指導者がいると何が変わったのか 出席率は指導者ありも自宅でひとりもどちらも81%で差がなく、差がついたのは膝を伸ばす筋力・立ち座り・歩く速さ・筋肉量という成果のほう ヤマカルテ

回数や負荷の目安が分からないなら質の側、決まっているのにマットを敷けないなら継続の側です。次の3つの型は、この2つの軸で選び分けます。

登山の自宅トレーニングを続ける3つの型

家でのやり方は、大きく3つに分けられます。

家でのトレーニングを続ける3つの型 自力型は強制力なし0円、動画型は強制力弱い0円から、約束型は強制力強い月3,000円台から ヤマカルテ

やり方強制力費用の目安向いている人
①自力型自分で組んで自分でやるなし0円回数と負荷を自分で決められる人
②動画型録画に合わせて動く弱い0円〜中断と再開が多い人
③約束型決まった時間に人と一緒にやる強い月3,000円台〜ひとりだと三日坊主になる人

①自力型——質は自分で担保できるが、枠がないと消える

自分で種目を選び、回数を決め、記録する。いちばん自由で、費用もかかりません。

登山向けのメニューは登山復帰の3本柱トレーニングにまとめてあります。下半身筋力・傾斜持久力・実際の山歩き、この3つを回せば土台はできます。

弱点は強制力です。何をやるか分かっているのに手が動かない人が、自力型で立て直せることはあまりありません。この型が合うのは、すでに運動習慣がある人です。

②動画型——中断に強いのが最大の利点

録画された動画に合わせて動く形です。無料の動画でも、サブスクの見放題でもかまいません。

利点は止められること。子どもが起きた、宅配が来た、そういう中断があっても、一時停止して戻れます。子育て中の家では、これが想像以上に大きい。

弱点は、止めたまま戻らない日があること。それでも自力型より一段強いのは、次に何をするかを考えなくていい点です。考える手数が減るほど、着手のハードルは下がります。

③約束型——時間を先に押さえてしまう

決まった時刻に始まるレッスンに参加する形です。ジムのスタジオクラスも、オンラインのライブレッスンもここに入ります。

強いのは、サボる判断を自分がしなくて済むこと。「20時30分から」と決まっていれば、それまでに風呂と皿洗いを終わらせる動きが自然に生まれます。継続の問題を抱えている人には、この型がいちばん素直な解決策です。

弱点は、時間を合わせる必要があることと、お金がかかること。

「約束型」を100円で試してみた

理屈だけで勧めるのは無責任なので、③の約束型を実際にやってみました。オンラインのライブレッスンサービス「SOELU(ソエル)」の100円トライアルです。

やったのは次の条件でした。

  • 子どもを寝かしつけたあと、夜遅い時間帯
  • 15分程度のレッスンを2本
  • 夫婦2人で並んで
  • ギャラリー枠(こちらの映像と音声を送らず、見るだけで参加する形式)
  • 受けたのはヨガ

やってみて、まず現実的だと感じたのは開講時間の幅でした。早朝5時台から24時台まで開いていて、1日平均140本ほど。子どもが寝たあとにしか時間がない人にとって、「その時間に開いていない」で詰むことがないのは大きい。

15分という長さも、私にはちょうどよく感じました。30分だと「今日はやめておこう」が出るが、15分はその判断が起きにくい。自分でも意外な発見でした。

そして、いちばん機能したのは夫婦2人でやったことです。ひとりなら布団に直行していた時間に、相手が座っているから自分も座る。約束型の本質は課金でもレッスン内容でもなく、この「降りにくさ」なのだと分かりました。

今回試したのは、この フィットネスSOELU の30日間トライアルです。

続かないのが継続の問題だと自覚している人にとっては、100円で確かめる価値のある額だと思います。ただし、申し込む前に必ず知っておいてほしい条件があります。

つまずいたのは「選ぶ」ところだった

良かった点だけ書くと嘘になるので、引っかかったところも書きます。

受けてみるまで、そのレッスンで何をやるのか分かりませんでした。

ヨガ、ピラティス、トレーニング、ダンス、バレエと100種類以上のジャンルがあり、1日140本ほど並んでいます。選択肢が多いのは長所ですが、タイトルと短い説明だけでは強度も内容も読み取れない。私はヨガの経験があったので流れに乗れましたが、未経験の人はここでつまずいて、初回で離れてしまいそうだと感じました。

また、私が見た範囲では、フィットネス・筋トレ系は思ったより少ない印象でした。ヨガとピラティスが中心です。登山向けの筋力トレーニングをここで完結させるのは難しそうだというのが、率直な感想です。

オンラインで直せること、直せないこと

オンライン指導で補えるのは「続けること」で、補いにくいのは「動きの質」です。理学療法士として、ここははっきり線を引いておきます。

オンラインで直せること・直せないこと できるのは決まった時間に参加して続けること、できないのは触れて確かめること・カメラに写らない角度・広い場所が要る動き ヤマカルテ

続けるという点では、オンラインは弱くありません。リアルタイムの動画で行うリハビリと対面のリハビリを比べた2024年のシステマティックレビューでは、オンラインのほうが出席率が8%高く、運動プログラムの遵守率が9%高いという結果でした[2]。満足度もほぼ同じです。移動時間がゼロになる分、予定に組み込みやすいのでしょう。

ただし、ここは3つ割り引いて読んでください。出席率の差は統計的にばらつきの範囲に収まる程度で、研究全体の確実性評価も「非常に低い〜低い」とされています。そしてこれは理学療法士が一対一で行う遠隔リハビリの話であって、指導者がこちらを見ていないオンラインレッスンにそのまま当てはめることはできません

それでも、「オンラインだから身が入らない」という思い込みのほうは、少なくとも研究に支持されていない。そう言える程度の材料にはなります。

一方で、見て直すほうには明確な限界があります。

遠隔での理学療法評価をまとめたレビューでは、関節の動く範囲、筋力、持久力、痛み、いくつかの整形外科的テストは遠隔でも妥当に評価できたと報告されています[3]。ただし対象となった集団や場面は限られており、そのまま一般化はできないとも結論づけられています。

現場感覚でも、画面越しにできないことははっきりしています。

  • 触れない——筋の張りや関節の動きの硬さ、押したときの痛みの場所は、触診が前提の評価になる
  • 画角に左右される——2Dの映像なので、カメラを体に対して合わせないと見たいところが見えない。骨盤の傾きや膝の向きは、写る角度で印象が変わる
  • 部屋が狭い——歩行やバランスの確認は、家では十分なスペースが取れないことが多い

向く人・向かない人——私は向かない側です

正直に書きます。私自身は、この形を続けません。

理学療法士なので、自分の体の状態を見て、必要な種目と負荷を自分で組めるからです。人に時間を決めてもらう必要がなく、月額を払う理由もない。①の自力型で足ります。

ですが、これは向き不向きの話であって、サービスの良し悪しの話ではありません。試してみて、次のような人には十分に選択肢になると感じました。

向いている人

  • 何をやればいいか自分で決められない人——献立と同じで、決める作業がいちばん重い。決めてもらえるだけで着手できる
  • ひとりだと三日坊主になる人——時間が固定されるだけで、サボる判断をしなくて済む
  • 家族と一緒にできる人——降りにくさが生まれる。私の場合はこれが最大の効用だった
  • 夜しか時間がない人——24時台まで開いているサービスは多くない

向いていない人

  • 自分でメニューを組める人——お金を払う理由が薄い
  • 登山向けの筋力トレーニングを主目的にする人——ヨガとピラティス中心なので、目的とずれる
  • 決まった時刻に必ず座れない生活の人——約束型の強みが消えて、ただの支払いになる

オンラインのレッスンが向く人・向かない人 向くのは自分で決められない人・三日坊主になる人・家族と一緒にできる人・夜しか時間がない人、向かないのは自分でメニューを組める人 ヤマカルテ

費用は前述のとおり、12ヶ月コースでLITE 3,278円/PREMIUM 6,578円、1ヶ月コースでLITE 4,378円/PREMIUM 9,878円(いずれも税込・2026年8月時点)。続かないまま過ぎていく数か月と比べて、これが高いか安いかという判断になります。

子どもがいる家で、現実的にどう回すか

子育て中は「山に行けない時期」と重なりやすいので、ここは具体的に書いておきます。子育て中で登山に行けない時期の過ごし方とあわせて読んでもらえればと思います。

子どもがいる家で自宅トレーニングを回す3つの形 寝かしつけたあとの15分・よく起きる子なら録画で・起きている時間に親子で ヤマカルテ

寝かしつけたあとの15分

私が実際にやったのはこれです。夜の家事を終えたあとに枠を置く。ただし、途中で子どもが起きるリスクは残ります。

よく起きる子なら、ライブより録画

中断が読めない家庭では、②の動画型のほうが現実的です。止めて、戻って、また止められる。「今日は5分で終わった」を許容できる形のほうが、結果的に長く続きます。

起きている時間に、親子で

これは今回やっていませんが、選択肢としては悪くないと思います。子どもが横で真似をするだけでも、親が動く時間は確保できる。夜まで我慢しなくていい分、実行率は上がるはずです。

いずれの形でも、山に戻る日のために優先したいのは下半身の筋力と、下りに耐える力です。登山ブランク1年で筋肉と持久力がどこまで落ちるかで書いたとおり、先に落ちるのは持久力で、筋肉そのものは数か月粘ります。数週間の空白で慌てる必要はありません。焦って強度を上げるより、細くても切らさないほうが、復帰は早くなります。

体が固まっている自覚があるなら、登山前後のストレッチから入るのも十分に「続いた」うちです。

まとめ:性格を変えるのではなく、型を選ぶ

  • 家トレが続かないのは意志の問題ではなく、きっかけ・強制力・目安のなさという環境の問題
  • 研究では、指導者の有無で出席率は変わらなかった(どちらも約81%)。差がついたのは成果のほうだった[1]。続ける工夫と質を上げる工夫は別物として考える
  • 家で続ける型は3つ。①自力型(自由だが強制力なし)/②動画型(中断に強い)/③約束型(時間が固定される)
  • ③を100円のトライアルで試したところ、15分という長さと、夫婦2人でやることが大きかった。一方で、受けるまで内容が分かりにくい点はつまずきやすい
  • 100円は30日間のお試し。期間内に手続きしないと本コースへ自動で切り替わり、12ヶ月コースは途中解約ができない。申込画面のコース選択を必ず確認する
  • オンラインは続ける点では対面に劣らない[2]。ただし触れない・画角に左右されるという限界もある[3]。未経験なら初心者向けから入り、痛みが出たら止める
  • 自分でメニューを組める人には不要。組めない人、ひとりだと止まる人にとっては、払う価値のある強制力になる

山に行けない時期にできることは、体を仕上げることではありません。切らさないことです。週に15分でも動いていた人と、3か月まるごと止まっていた人とでは、戻る日の一歩目がまったく違います。

今日決めるのは種目ではなく、です。「何のあとに、何分やるか」。まずそこだけ決めてしまいましょう。

参考文献

  1. Gómez-Redondo P, et al. 2024. Supervised Versus Unsupervised Exercise for the Improvement of Physical Function and Well-Being Outcomes in Older Adults: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Sports Medicine 54(7): 1877-1906.
  2. Simmich J, et al. 2024. Real-time video telerehabilitation shows comparable satisfaction and similar or better attendance and adherence compared with in-person physiotherapy: a systematic review. Journal of Physiotherapy 70: 181-192.
  3. Zischke C, et al. 2021. The utility of physiotherapy assessments delivered by telehealth: A systematic review. Journal of Global Health 11: 04072.